ひとつ夢を叶えたんだと、わたしに教えてあげたいよ。悲しみを悲しみで終わらせない方法を見つけたんだよ。

それでも生き抜いてきたんでしょう、と言われて、そうだ。わたしはそれで生きてきた。いちども死なずに生き続けてきたんだって叫びたくなった。抑圧、抑圧、抑圧。解放を知ってから、わたしは喉に力が入る瞬間を見つけてしまったよ。

風を感じることができるんだ。涼しくて心地よいと、足を止めるようになったんだ。

わたしはどんどんと、人間になってゆく。戻ってゆく。締め付けられた紐をすこしずつ緩めて、へばり付いた笑顔を剥がして、すこしずつ。

身体と心を研ぎ澄ませば、傷付くことが多くなった。それに気が付けたとき、わたしはこんなに小さなことで傷付ける程、繊細に生きているんだと嬉しくなった。

ただしいあり方なんて70億個あるよ。わたしはわたしのただしいの上を歩いて、ときには踏み付けて、前へすすむ。

ギターを買った。ミニギター。歌を作るようになったよ。仲の良い友達と疎遠になって、肋骨を折って、沢山泣いて、それから、それから、おじいちゃんが死んだよ。

 

後悔ばっかの人生だ。でもさよならじゃない。気が狂ったわけではないけれど、嬉しいんだ。失って悲しく思えた自分が嬉しかった。大切だったと気付けたことが、言いたかった言葉が心にあったことが、それらぜんぶ。でも悲しいね。喉がぎゅってなるんだ。泣きそうなときのわたしの癖。ちいさいとき、泣かないように一生懸命力を入れて、喉を詰めて、涙も言葉も堰き止めてた。頑張ったんだよな、ずっと。

すこしずつ、生きてゆくよ。人間だから。

わたし、人間だからさ。