ねぇ生きてるの?

 

久しぶりだね。

 

ずっと生きてたの?

 

わたしは随分と生きてたよ。

 

わたしはもう、もう、言いたいことなんて何にもなくってさ。あんなに殴り書きのように湧いていた言葉がやっぱり、ちっとももう顔を出さないんだ。ずっと一緒に居たのにね。夢を叶えた罰かしら。何を言うかよりも何を言わないかが大切になってきたこの世界で、やっぱり口を開いてしまって。慌てて閉じて。息苦しくてまた開いて。

 

そんな繰り返しだよ。笑えるね

 

心はずっと変わらないなんて嘘で、わたしは随分変わったみたい。濁流のような激情は眠りについて、自分の本質のような何かを凝視するようになった。触れられると痛いところを守るようになった。自分のどこに傷が付いているのか、きちんと知った。その上で、その傷を持て余してる。

「ずっと蓋をしていたソレを開けるのはとても怖いことだと思うし、きっと放置していた年月分酷いことになってるだろう。だけどあと10年、20年と過ぎてしまったらもっと開けられなくなるよ」と言ったひとから、わたしは逃げてしまった。その話は痛かった。喉がどうしようもなく締め付けられて、降参したい気持ちだった。何も持たない少女のように、わんわんと泣くのは苦痛だった。だけど、堪えきれず溢れた涙を器用に拭える程に大人にはなれないまんま。

いつまでも奇跡を待っている。王子様でも魔法でも異世界転生でもなく、ひだまりのような奇跡を。

 

あしたも生きてゆけるかな。可能な限り、生きてゆくよ