ラブレター

 

 

左目が乾いた。いたくて、つらくて、それでもぱちぱちと拍手のように目蓋を叩いた。

幸せのジェスチャーの仕方がこの世には沢山あるのだと、私は知っていた。2人分の食料、誰かの影を切り取った写真。楽しかったと、口に出さずにSNSに放り投げること。

凡庸に、幸せが消費されていく。誰かの目に触れれば触れる程、擦り切れて、褪せてゆく。

きみは、美しい。弱さを知り、強くなった。「道端に咲いた花が綺麗だ」と朗らかに、柔らかに笑うきみの笑顔が一等好きになった。切れ長の双眼の端っこが垂れるのが、愛おしくて、愛おしくて、たまらなかった。

幸せでいてほしいと思う。

きみときみの大切な人以外が知らない場所で、誰かより、なんて比べることもないままに幸せでいてほしいと思う。どうか、柔らかな愛情を抱えたまま、月にも太陽にも見つからず、歳をとって下さい。

あいしてる。愛してる。愛しています。

きみの幸せを想像して微笑む度に、こんなものではない幸せがきみを抱き締めてくれるはずと、きみの他愛無く幸せな日々を殊更願った。

今日も道端の花は綺麗だった。

だから私は、誰にも言わないでおくよ。